健康コラム > 健康コラム第6回 「ピロリ菌ってどんな菌? 」
目次
ピロリ菌とは
正式名称はヘリコバクター・ピロリといいます。
1979年に胃炎患者の胃の粘膜内に発見された細菌で、らせん形をしている事から、その名がつけられました。ヘリコ(らせん状)バクター(細菌)が、胃の出口付近のピロルス(幽門部)から多く見つかることから、「ヘリコバクター・ピロリ」と命名されました。
ピロリ菌の特徴
本来、胃の中は強い酸性のため、通常の菌は生息できません。しかし、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を作る力があり、胃の中にある尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解します。このアンモニア(アルカリ性)で酸性を弱め、ピロリ菌の周りの酸を和らげます。
こうしてピロリ菌は強い酸性下の胃の中でも生育し、胃炎や胃潰瘍、胃がんなどを引き起こす原因となることが明らかになっています。
感染原因
上下水道が十分整備されていなかった年代では、ピロリ菌が混入した井戸水を飲むことによる経口感染が主と考えられていますが、最近では上下水道が整備されているため、現在ではピロリ菌に感染している親から子どもへの食べ物の口移しによる感染が問題視されています。
幼いときに一度ピロリ菌に感染すると、一生の付き合いとなってしまいます。
そのため日本では、60歳以上の世代での感染率が高い反面、衛生環境が整った時代に生まれた若い世代の感染率は低くなっています。
ピロリ菌に感染するとどうなるの?
ピロリ菌に感染したからといって、胃潰瘍や胃がんを必ず発症する訳ではありませんが、感染した人のほとんどは胃の粘膜に炎症が起こります。
炎症は、しだいに胃粘膜全体に及び、慢性胃炎となります。つまり、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎です。
除菌しない限り、ピロリ菌は胃の中にすみ続けます。その結果、慢性的炎症が続き、胃の粘膜を防御する力が弱まります。ストレスや塩分の多い食事、発癌物質などの攻撃を受けやすい無防備な状態といえます。
これらを放置すれば、胃がんがいつ出現してもおかしくない状態が続きます。
検査方法
ピロリ菌を見つける検査には大きく分けると内視鏡を使わない方法と内視鏡を使う方法があります。
●内視鏡を使わない方法●
尿素呼気試験 抗ピロリ抗体/抗原法(採取した血液、尿、便で検査)
●内視鏡を使う方法●
培養法 迅速ウレアーゼ法 組織鏡検法
上記のように、ピロリ菌感染を調べる検査方法はさまざまで、施設によって実施される検査が異なる場合があります。
医療機関でしっかり説明を受け、メリット・デメリットを理解し検査を受けましょう。
胃がんリスクを知ろう
胃がんリスク層別化検査(ABC検診)は、ピロリ菌感染の有無を調べる検査と、胃粘膜の萎縮を調べる検査(血清ペプシノーゲン値)を組み合わせ、胃がんのリスクを判定する検査です。
※がんをみつける検査ではありません。
人間ドックを受ける機会には、オプションのABC検診も是非ご検討ください。
ピロリ菌の除菌治療
胃酸の分泌を抑制する薬と抗生物質2種類の、3つの薬の併用が一般的です。1週間、薬を内服する事により、約8割の方は除菌に成功すると報告されています。
除菌後の判定検査を受診し、ピロリ菌の有無を確認しましょう。
除菌後の判定検査を受診し、ピロリ菌の有無を確認しましょう
除菌薬服用後、胃の中に本当にピロリ菌がいないのかを調べることはとても重要です。一度で除菌できない場合もあります。
除菌できなかった場合は、薬剤を変更し除菌をする事になりますので、除菌後の結果確認は必ず行い、主治医の先生の指示に従いましょう。
ただし、ピロリ菌に感染していた期間が長いと、胃の粘膜が正常に戻るのに時間がかかるので、除菌完了後もこれまでと同様、定期的な胃がん検診や内視鏡検査などを受け、胃の状態を確認しましょう。
この様な事から、胃粘膜の萎縮があまり進んでいない若年者のピロリ菌感染者を見つけ出し、早期に除菌治療を行う事が、将来の胃がん発症予防のためには大切です。
まとめ
ピロリ菌感染は、胃炎、胃潰瘍、胃がんのリスクを高めることがわかっています。
つまり、ピロリ菌を除菌すれば、胃炎、胃潰瘍、胃がんになるリスクを下げられる、ということになります。
衛生環境が整い感染者数が減っているというものの、早めに検査を行い、ピロリ菌感染の有無を知ることは大切です。また感染していたら早めに除菌をすることで、健康な胃を取り戻したいですね。
松阪市と松阪地区医師会臨床検査センターでは、将来の胃がん発症予防のため、市内在住の中学3年生(本人と保護者が同意した方)を対象に、ピロリ菌検査事業を実施しています。
ピロリ菌を早期発見・早期治療することで、胃がんを予防することが期待できますので、この機会にピロリ菌検査を受けましょう。
松阪市:中学生ピロリ菌検査事業のお知らせ(松阪市サイト)